秋田地方裁判所 昭和43年(わ)141号 判決 1969年4月28日
本籍並びに住居
秋田県鹿角郡十和田町大湯字川原ノ湯一三番地の四
伐木造材
土木建築業
石川良太郎
明治三七年一一月一五日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官佐藤幸雄出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年及び罰金五〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金一万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
ただしこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、秋田県鹿角郡十和田町大湯字中田一〇番地の五に事務所を設け、伐木造材・土木建築請負業等を営んでいるものであるが、右事業に関し、所得税を免れる目的をもつて、売上の一部除外および伐木費・工事費等の架空計上等の不正の行為により、その所得の一部を秘匿し、
一、昭和四〇年一月一日から同年一二月三一日までの昭和四〇年分における実際の所得金額は一七、一七一、二六七円、これに対する所得税額は七、七七〇、八〇〇円であるにもかかわらず、昭和四一年三月一四日、所轄花輪税務署長に対し、昭和四〇年分の所得金額が三、三四〇、二七二円、これに対する所得税額七五〇、五六〇円である旨虚偽の所得税確定申告書を提出し、よつて不正の行為により、同年分の所得税七、〇二〇、二〇〇円(実際の所得税額との差額金七、〇二〇、二四〇円のうち四〇円は国税通則法第九一条により切捨)をほ脱し、
二、昭和四一年一月一日から同年一二月三一日までの昭和四一年分における実際の所得金額は二六、二七一、〇一五円、これに対する所得税額は一三、〇一五、九〇〇円であるにもかかわらず、昭和四二年三月一五日所轄花輪税務署長に対し、昭和四一年分の所得金額が四、九六四、二七九円、これに対する所得税額一、三七一、一二〇円である旨虚偽の所得税確定申告書を提出し、よつて、不正の行為により、同年分の所得税一一、六四四、七〇〇円(前年分同様八〇円の切捨)をほ脱し
たものである。
(証拠の標目)
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察官に対する供述調書
一、収税官吏作成の被告人に対する質問てん末書一二通
一、被告人作成の上申書三通
一、阿部真一、石川雄三(一〇通)の検察官に対する各供述調書
一、収税官吏作成の畠山雄幸、石川雄三(二七通)、村木民治、松尾武夫(二通)、小野清蔵(二通)、宮腰幸一(四通)に対する各質問てん末書
一、石川雄三(五通)、小野清蔵、宮腰幸一作成の各上申書
一、被告人及び石川雄三共同作成の上申書二通
一、収税官吏阿部真一作成の脱税額計算書二通、脱税額計算書説明資料、固定資産減価償却明細表並びに所得税の修正申告書謄本
一、収税官吏菅谷啓造作成の簿外預金調査書、銀行調査書、「その他預金」調査書および不突合額内訳説明書、簿外預金の受取利息調査書並びに東北パルプ株式会社関係取引調査書
一、収税官吏池田栄一作成の資産の譲渡損益および除却損失調査書
一、収税官吏斉藤巽作成の不明入出金検討表
一、小野清蔵作成の取引内容の回答についてと題する書面
一、押収してある元帳三綴、現金出納帳二綴、銀行勘定帳二綴、総勘定元帳(給油所分)二綴、現金出納帳(給油所分)、買掛補助簿、買掛帳、固定資産台帳、賃金計算原案綴、賃金集計書、材木費計算メモ帳二六冊、送金案内書二冊、東北パルプ精算書綴、手帳(三冊)、賃金計算資料二綴、支払等清算メモ二袋、所得税確定申告書二綴(以上、昭和四四年押第五号の一乃至二八)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はそれぞれ所得税法二三八条に該当するが、以上は刑法四五条前段の併合罪であるので、懲役刑については同法四七条前段一〇条により犯情重い判示二の所得税法違反罪につき法定の加重をなした範囲内で、罰金刑については同法四八条二項により所定罰金の合算額の範囲内において、被告人を懲役一年及び罰金五〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは同法一八条により金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、右懲役刑については同法二五条により本裁判確定の日から三年間その執行を猶予することとする。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 新田圭一)